ある家族のノンフィクション手記

親兄弟は選べない。家族という病

わが家の最初の大事件 3

ある日の休日、父は珍しく私と年子の弟を遊園地に行こうと誘って来た。

当日の朝になってから急に言い出した。

 

お母さんは?

一番下の弟は?

 

「(末っ子の弟は)まだ手がかかるからお母さんとお留守番だ」

母も「わたしも行く」と言ったが、

「入園無料のチケットが3枚しかない」

「早く行って、早く帰ってくる」

母をなだめながら、3人で行こうとする。

 

「"よしこ"(仮名・私)がずっと行きたいって言ってただろう。だから連れて行ってやるんだぞ」

確かにずっと連れて行って欲しいとせがんでいたが

家族全員で行くもんだと思っていた。

 

「さあ行くぞ!」と、急に号令がかかる。

ベランダで母が末っ子を抱っこしながら手を振っている。

末っ子の弟は「ボクも行きたいのに」と赤面させて泣きじゃくっている。

 

ベランダにいる母を見上げて手を振るのははじめてのことで、

不思議な気持ちと弟が行きたいのに置いていく罪悪感を抱きながら

ごめんねと心でつぶやいて手を振った。

 

いつもは子どもの面倒を一切見ない父なのに…?

家族でどこかに出かけたり嫌う父なのに…?

父の珍しい行動に、違和感を感じながらも車に乗り込んだ。

不思議に思いながらも、子どもなので楽しい方、ワクワクする気持ちの方にすぐシフトした。

 

遊園地に着くと、そこにはたかし君とたかし君のお母さんが来ていて

こっちを見て手を振っている。

子どもながらに、このシチュエーションに違和感を感じた。

たかし君のお母さんはいつも着ているようなラフな服ではなく、

遊園地には似つかわしくない体のラインがしっかり出るワンピースとヒール、

母親の顔ではなく女の顔になっている。

濃いメイクのせいだろうか?

 

父は満面の爽やかな笑みを浮かべて、

たかし君に「君たち、これでしっかり遊んで来なさい」とお札💴を渡した。

たかし君と弟は「わ~い」「やった~!」と喜んでさっそく乗り物へ走っていった。

私も一瞬「やった~!」と走りかけたが

いや、待てよ?!

いつもは家族には「鐚(びた)一文」出したくない父だ。

なんだこの違和感は…

父の普段とは違う行動に、頭の中が一瞬「?」となる。

100円のものを買ってもらうのがやっと。そんな父が

かっこつけて大盤振舞にお札を渡すという、

いつもと違う行動に妙な違和感を感じた。

お札だよ?え?なんかおかしい。

 

そんな私に「おまえも行ってきなさい」と言う。

「それならお父さんも一緒に行こうよ」と誘うが

「お父さんが乗ったら、たくさん乗れないだろう?お父さんはここで見ているから。行ってきなさい。」

「でも…」

「どうした?いつも遊園地に行きたい。乗り物にたくさん乗りたいって言ってたのは

"よしこ"だろ?ほら、行ってきなさい。ね?お父さんはここから見ててあげるから」

 

そういって背中を押されて、子どもは単純、すぐに楽しい方に心が傾き、たかし君と弟の行った方へと向かった。

 

…つづく

<当時を振り返ってみて>

偶然を装うにしても変だ。

当時はポケットベルも携帯電話もFAXもインターネットもない時代。

用事がある時は自宅に電話をしなければいけない時代である。

前回、集会所で打ち上げをしていた時に、私が心配になって父の宴会が終わるまで監視していたつもりだ。

もちろん子どもが見てない隙をついて、約束を取り付けていたと言われてしまえばそれまでだ。

 

どうやって約束を取り付けたのか知らないが

自治会のおじさんに協力者がいたと思われる。

伝書鳩的な役割で、約束の場所など

電話で伝える役目の人がいたと思う。

いい人ぶりながらも、その人もなんだかんだ、その光景を楽しんでいたんだと思う。

噂のネタになるだろうし、期待通りの行動をしてくれる二人を面白がっていたんだと思う。

当時わたしは子どもだったので、真実はわからないが

なんとなく違和感というものがあり、点と点で結んだら…と整理していった結果、推測です。

普段あまり電話がかかってくることない家だったので、

珍しいなぁということもよく覚えているもので、おじさんがどうも怪しいと思っている。

 

#毒親 #自己中な親 #無責任な親 #自治会不倫