ある家族のノンフィクション手記

親兄弟は選べない。家族という病

カルト宗教のムチの実態

…つづき

母に「愛のムチ」という大義名分ができ、強力な武器を持つことができた。

母親にとっては都合のいい教義だったと思う。

ストレスを発散できる場だったから。

それに加え、子どもが怯え、自分の思い通りになることの快感を覚えた。

征服欲が満たされ、より支配的になり、自分の思うようになればなるほど

感情を抑えることができない、ただのわがままな大人になっていった。

 

両親が離婚して直後のエホバの証人の会衆の大人たちの言葉に驚いた。

普通なら

「つらかったでしょう。困ったことがあったら相談に乗るよ。いつでも頼ってね。」

と子どもの心の傷に寄りそうような言葉が出てもおかしくないが

驚いたことに、このエホバの証人の集団の大人は皆決まってこういうのだ。

「お母さんの言うことをよく聞いて支えてあげてね」

「従順にして、お母さんを助けてあげてね」

大人優先の言葉ばかりなのだ。子どもを労わる言葉が誰一人として出てこなかった。

私は十分いい子ちゃんなのだ。いい子ちゃんを演じているんだ。

もうこれ以上、どういい子ちゃん=従順でいろというのか?違和感があった。

 

親=自分が一番

この宗教らしい特徴だなと思った。

子どもの気持ちなんて考えたことない大人の集団だから、自分都合の言葉が出ても不思議でもない。

 

世の人=宗教外の大人の方が、人情味あふれる、あたたかい言葉をかけてくれたし、親身になってくれた。

「親の都合で振り回されてしまったけど、傷ついているのは子どもの方で子どもは悪くないのよ」

「これは大人の問題だから、あなたのせいではないのよ。自分を責めないようね」

とか子どもの心に寄ってくれてた。

寂しくなったら、いつでもうちに遊びにおいで。

救われた言葉が多かった。

 

母にそのことを言うと、親の問題という言葉が気に食わなかったのか

何をわかったようなことを!所詮世の人の言うことなんて間違いなんだから!と

一括りに”世の人” ”サタン”といって、接点をもたせないようにする。

 

父は数年家に帰ってこなかったので、親が離婚したくらいで生活自体は変わらなかったが、生活レベルが下がって苦しかった。

親が離婚してよかった点は、両親の激しいいさかいがを見聞きせずに済んだこと。

親が離婚して困ったことは、父がいなくなってからの方がムチ(家庭内暴力)がひどくなっていったこと。

母のヒステリックが以前より激しさを増したこと。

 

母から言われる言葉          母に言って欲しかった言葉

「こんなことなら産まなければよかった」 →「生れてきてくれてうれしい」

「産みたくなかった…」     →「産まれてきてきてくれてありがとう」

「消えてほしい」        → 「いてくれて助かる」

「目障り」           → 「誰よりも大切だよ」

 

母から言って欲しい言葉を聞きたいが一心に、私は好きでもないエホバの証人の勉強も従順に頑張った。

怒ってばかり、泣いてばかりの母の笑顔を見たかったから。

 

いい子にしても、どんどん親の要求はエスカレートしていくばかり。

当時を振り返って例えるなら、シーツにブリーチをかけて真っ白になったシーツを広げて、

小さな小さなわずかな微点を虫眼鏡でさがしているような感じだ。

微点、わずかな点、その一点のシミが目立ち、

異様にその微点に囚われているような感じだ。

取るに足りないささいなことが気になって

もっといい子に、もっともっとを求めているような感じだ。

真っ白なシーツを隈なく、わざわざシミを捜しをしているような感じ。

わざわざ悪いところを探して、指摘材料を見つけ

わざわざムチができる材料を探しているように見えた。

 

以前より増して些細な事でムチの回数が増えて行った。

 

はじめは革のベルトだった。

これがものすごく痛いのだ。

パンツを脱いで生尻に叩かれるのだけど

1発でも痛いのに1回につき20~50発くらいの頻度で叩かれるのだ。

なぜ回数叩くかといえば、ムチで叩くと子どもは恐怖に支配されて、

おとなしくなり、親の言いなりになるからだ。

親が正しいからとか親を尊敬しているからではなく

ムチという暴力に怯えて言うことを聞くのだ。

するとその効力に親はのめりこんでいく。

もっと言うことを聞かせたい。

だから回数も増えていく。

親はその威力に味をしめ、どんどんとムチが手放せなくなる。

 

解離性というのか?

叩かれている自分から抜け出し、自分の真上(天井)から俯瞰して見下ろすことで、叩かれているのはここにいる私ではなく、下にいる自分だと、思い込むと痛さが和らぐことを発見した。

 

ムチが終わった後は必ず

「ありがとうございました」と言わなければ追加のムチが執行されるのだ。

ありがとうございますと聞くことによって親は「正しいことをしている」と都合よく解釈し、いいことをしているという錯覚をさせ、良心の呵責を失くし、罪悪感を感じることなく、すべては自分に都合に置き換えて、どんどんムチの虜になっていくのだ。

 

わが家では当初、牛革のベルトだったが叩いた時に、革がしなって母親の腕に反り返って自分が痛いということで「布団叩き」に変わった。

実は布団叩きの方が痛くないのだ。

ベルトの修行に慣れたので布団叩きは楽勝に感じていた。

ただ布団叩きの方が痛くないとバレて、ベルトに戻ると困るので

ベルトより痛いフリをした。

苦痛で苦しむ顔をして、苦しみに悶える演技をした。

全ては自分の身を守るため。

 

お姉ちゃんだから

一番上だから

という理由で私が特にムチが多かった。

 

4歳下の末っ子の弟は小さいからという理由で

同じことをしても免除されることが多かった。

兄弟間に生じる「えこひいき」が許せなかった。

同じことをしても弟は許されるという兄弟間の差別

私も子どもなのに何故?と不満を持つ。

同じことをしても末っ子の弟は叩かない。

私は生理中でもおかまいなく叩かれるのに。

なぜ私は叩かれて末っ子には叩かないか聞いた。

末っ子は7歳の時にお父さんと離れ離れになってかわいそうだからという理由だった。

あなたは11歳までお父さんと一緒にいれたんだからと。

夜な夜な繰り返される激しい夫婦喧嘩を見せつけられた方がトラウマになるのに。

理不尽だなぁと思った。

物が割れる音と怒鳴り声、悲鳴を聞かされる恐怖といったら。

世の中は理不尽なことだらけ。

不当な理由に釈然としなかった。

 

滅多と叩かれない末っ子の弟がある日、親を怒らせるレベルの悪さをしたのでムチで叩かれたのだ。

ムチの痛さに怒った弟はその「布団叩き」を

真っ二つにへし折ったのだ。

その時は、これでムチから解放される!と一瞬喜んだのも束の間。

 

さらなる悲劇が待っていた。

ガスホースに変わったのだ。

たかが”ガスホース”だと甘く見てもらったら困る。

このガスホースは持ちやすい長さにカットできる上、

見た目以上にめちゃくちゃ痛いのだ。

工業用の強化ゴムホースで金属線のような細いワイヤーがゴム繊維に埋め込まれていて

リアルヤクザの世界に出てきてもおかしくない拷問道具だった。

 

痛さの基準

 布団叩き < 革ベルト < ガスホース

 

さすがにこのガスホースは、革ベルトの時にできた「解離性」のワザができないくらい、痛かった。

※叩かれている自分から抜け出し、自分の真上から俯瞰して見下ろして、別人になることで痛さを

鈍感にさせる技術

 

たった1回で飛び上がり、次の1手が恐怖のあまり転げまわり、あまりの恐怖で泣くほど威力を発揮する逸材だった。

わかっている。泣いたら回数が増えることくらい。

それでも抑えきれず自然と嗚咽が出るほど痛かった。

泣いたり声を出すと反省していないと見なされ、泣き止むまで叩き続けられる。

本当に痛くて、自然と漏れてしまうのだ。

(こうやって痛いのに声を出してはいけない、泣いてはいけないと、

自然の摂理と逆のことをしつづけた結果、

自分の感情を押し殺してきた結果、

あらゆる弊害で今も苦しんでいる)

 

このワリヤー入りのガスホースはイスに座ることさえできないくらいミミズばれができる。

学校のイスというのは硬い木で出来ていて、痛くない部分を一点集中させなけばならない。でもずっとその1点で支えることはできず、重心を変えると、激痛が走る。

ムチで叩かれたら当然痛いが、その後も数週間はムチの痛みと傷が残り、

四六時中痛む。

仰向けに寝れないし、寝返り返す時も激痛が走る。

お風呂のお湯が当たるだけでも傷い。

精神崩壊レベルの虐待だった。

ムチは生尻に直接叩き、服で隠れるから虐待が発覚しずらい。

 

ムチに怯えて子どもはどんどんいい子になっていく。

ムチを見せるだけで恐れおののく姿を見て、味をしめた親はムチの虜になっていき

1回の叩く回数が30~50発。

これが1セットとカウントして、今日は何セット叩かれるだろうか。

今日は1セット?今日は少なかったなぁ、傾向を分析してみよう。

そうか、今日は集会があったからか!

 

1発くらいならお尻に命中して叩けるものの

回数が増えると親も疲れてきてリズムを崩し

お尻とは別のところ、太ももの裏に当たるのだ。

ブルマになるとまるみえで

赤黒かったり

青紫だったり

それが酷くなると黄疸になる。

やっと前のが消えかかっていたのに、また新しいアザが増える。

座るのも寝返りを返すのも痛くてつらい。

授業に集中できない。

集会も座りっぱなしだからつらい。

じっとしていないと別室に連れて行かれてムチで叩かれるし、負の連鎖だった。

 

家庭は良くも悪くも密室。

泣かないように言われて、痛いのを我慢して声を押し殺すから、外部には気づかれにくい。

ムチは生尻にするから傷跡もわかりにくい。

家庭内で行われている悲惨な現状が外にわからない状況を作り出す。

 

ある日、小学校の担任の先生が

授業が終わってから職員室に来るように言った。

…つづく

 

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