ある家族のノンフィクション手記

親兄弟は選べない。家族という病

★お金を貸す時は返って来ないと思え?

夏休みにパチンコ屋で働いたことがある。

高校3年の秋には授業が終わってから教習所に通いたかったので

夏休み中に今後の授業料をまとめて稼ぐ必要があった。

 

求人を見てるとパチンコ屋は時給がいいというイメージがあった。

友達とノリで「アルバイトできますか?」とアポなしで訪ねたことがきっかけだ。

高校生だから断られるだろうと思っていたらまさかの採用。

夏休みの2ヶ月限定で短期間だけ働くことになった。

朝番と遅番の二部制の交代制で、友達が朝番なら、私は遅番と、ふたりが一緒にならないシフトが組まれ、友達と同じ時間帯で働くことはなかった。

時効だから言えるけど、高校生は労働基準法に則ると22時までしか働けないが閉店の23時まで働いた。

学校の先生も何人かパチンコしに来た。

パチンコ屋で先生と鉢合わせになった瞬間、

「あ…謹慎か退学。終わった」と顔面蒼白になったが

「どの台が出るん?」と冗談を言いながら”生活のためにバイトしているなら”と割と寛大に目をつぶってくれた。

 

私も訳アリの家庭で育った人間だけど、そこで働く人たちも相当訳ありだった。

借金をして夜逃げして来た人、駆け落ちした人、”お勤め”から出てきた人…様々。

パチンコ屋の上に寮が完備され、エアコン・TV・賄い(昼夜食事付き)なので荷物ひとつですぐに生活がはじめられ、衣食住が確保されるから、流れ者が行きつくにはもってこいの場所だったのです(当時は…)

 

冷房完備で賄付き、今までしたバイトの中で一番快適な環境だった。

様々なバイトをしてきたが、”暑い、寒い、きつい”がつきものだったから

家にいるより涼しくて快適だった。

 

換金所で働いていた女性がいて、母と同じくらいの年齢。

一回りほど年下の旦那と駆け落ちしたという。

旦那さんは換金所の責任者、奥さんが換金所の窓口をしていた。

私と歳の近い息子がいて、元旦那のところに置いてきたという。

 

換金所は5畳くらいの小さな部屋で、奥さんは特殊景品を受け取って、換金する。

私はその特殊景品 ”積み木” ”レゴ” のようなものを整理する単純作業。

おしゃべりしながら仕事ができた。奥さんと話すこの時間が楽しかった。

息子と歳が近いから息子のことを思い出すわ。

年頃の子は何に興味があって、何をして遊んでるのか、興味があるから話を聞かせてと

目を輝かせながら言ってもらえると、私は受け入れてもらえているんだ。

私に興味を持ってくれているんだ。好いてくれてるのがわかってうれしかった。

年の離れた友達ができたと舞い上がっていた。

母とは違い、理解があり、聞き上手で、私を肯定してくれる。

母には本心を言えない。

母に何かにつけて邪魔をされる環境にいたので

何を考えているのか悟られないように言動をコントロールしなければいけない不自由な環境にいたから

心が許せて、本音で話せる”大人”が目の前にいることが単純にうれしかった。

私は人生で初めて”自慢できる年の差の友達”ができたと喜んでいた。

 

二人の関係性ができあがった頃に、奥さんは私に身の上の相談をした。

バイトも終わりに近づいた8月の終わりだったと思う。

旦那さんがお金を管理している。

生活費・給料も全て旦那さんが管理している。

今月はまだ生活費をもらえてない。

忙しそうでお金の話ができる状況でないこと。

だから今使えるお金がないこと。

でも来月息子の誕生日だから誕生日プレゼントを買ってあげたいけど

旦那さんには口が裂けても息子の話題ができないこと。

こんな不甲斐ない母親だけど息子は成人という節目だし、

母親らしいことをしてあげたいと思ってること。

でもこんなこと誰にも相談できないけど、あなたには自然と何でも話せる。

親子ほど離れているあなたに相談するなんて惨めなのを承知でお願いするんだけど

来週に必ず返すからちょっと貸してほしいというような内容だった。

 

一瞬怯んだ。

「お金を貸す時は返って来ないと思え」

奥さんのことを信じ切っていた私は、いい人だし、必ず返してくれると信じていたし、信じたかった。なにより二人の関係性を信じて疑わなかった。純粋に助けてあげたいと思った。

 

世間知らずな私は貸すことにした。

「本当にありがとう。必ず返すからね!」

と笑顔で別れた。

そして約束の2週間後、喫茶店で会った。二学期も始まり、バイトも辞めていた。

たわいもない世間話をして、軽食を食べ終わった頃に

「約束のお金が返せない状況になった。

社長(旦那)が資金繰りに困ってて、機嫌が悪くて今お金の話ができない状況なの。

本当にごめんね。今月の生活費ももらえる状況じゃないの。

このことは他の人に内緒ね。資金繰りに困ってることもね、

お金を扱う仕事してるから信用問題にかかわるから絶対言わないでね。

こんなこと言えるのあなたしかいないし。来週には必ず返せると思う」

胸騒ぎがし出した。

 

次の週も言い訳をする。

 

お金を貸す時は返ってこないと思えとはいうけど、お金がないと学費が払えない。

 

冷静に考えると私をハメるために、どういう戦略で攻めたらいいのかと、根掘り葉掘り私の話を聞いていたような気さえしてきた。

今までどんな話をしてきたか、思い出そうとしたけど思い出せない。

ただ、言えることは”人の話を興味深く聞いてくれ、受け入れてもらえたと舞い上がって、自分の話をしたという事実”だけで、何を話したのか覚えていない。どこまで話した?

貯金額聞かれたような気がする…。

初めから騙すつもりで近づいてきたのか?

話しているうちに魔が刺したのか?

その人の話しがどこまで本当の話なのか?

もしかしたら作り話なのかもしれない。

 

泣き寝入りできるほど、私は金銭的に余裕がなかった。

あと半年で卒業を控えているというのに、卒業できなければ意味がない。

 

悩んだ末に、内緒と言われていたけど一緒に働いていた友達に相談した。

友達は至って冷静だった。

人に簡単にお金を借りようとする人を信用してはいけない。

そういう人は見え透いた嘘をつく。

大体いい年して、高校生にお金を借りること事体おかしい。

金銭自己管理できてない人は何事にもだらしない。

 

次会う約束の時には友達もついてきてくれ、仲裁に入ってくれた。

奥さんはただならぬ空気を感じとって居づらそうだ。

高校生とは思えない正論をぶつけられ、ぐうの音も出ず、たじろいでいる。

親子ほど歳が離れている小娘に説教されて、メンツが立たない。

友達の説得のおかげで ”ないはずのお金” は返してもらえたのでした。

そして私が勝手に奥さんを親友だと思っていた"友情関係"も消えました。

 

親友には何度か助けられました。

冷静な判断と、はっきり言う物言いで、裏表がなく、頼れる友達です。

 

この奥さんの一件で、人にお金を貸してはいけないこと。

特に大親友には貸借りをしてはいけないこと。

人を簡単に信用してはいけないことを学んだのでした。

幸い高校生という低年齢でこの経験したおかげで社会に出てから

さらに注意深くなり、気さくに近づいてくる人に警戒心さえ覚えました。

日本人は、ある程度距離感を作って、初対面の人とゆっくり時間をかけて関係性を築く人種のように思います。

それをいきなり垣根を越えて、急接近してくるような相手だと

「この人は私の何を目的で近づいてきたのだろう?」と

冷めた目で見るようになってしまいましたが、いい抑止力になっています。

誰かに心を開くことは時としてリスクも伴います。

世の中には詐欺、MLM、ビジネス講座、マッチングアプリや出会いの場、あらゆるところにカモを探している人はわんさかいます。

怪しい人はその人だけ浮き出てみえるようになってきました。

 

あの経験があったから、自分の身を守れるようになったかと思うと

悪い経験も「気づき」を与えるための

私の目の前に起こった出来事だったと思えると

ネガティブな出来事でも感謝できたりします。

お金を稼ぎながら社会勉強までして、こうやってネタにできるのですから。

しかもこの経験を高校生でし、お金も戻って来て、損はしていません。

 

どういう職場で働くか、どういう人間と関わるかで、危険な目に遭遇する確率が高くなったり、自分の考え方・価値観まで変わってしまうことを身をもって知り、この業界で働くのは最後にしようと思ったのでした。

 

母もそうですが、頼れる大人がいない。そう思った10代でしたが

頼れる人、何とかしてくれる人がいなくて、そういう環境だったから

自分でなんでもやるしかなかった。

心許せる人がいないことは寂しいことかもしませんが、人に依存せず、期待せず、なんでも自分でやってしまう性格は、結果的に、気つけばひとりでも生きていける力と経済力をつけたとも言い換えれます。

 

人間は平等に老います。

若い時は誰かに依存するのもかわいいでしょうし、美貌だけでなんとか渡っていけたとしても

次の世代に若くてかわいい子が控えていますので、いつまでも”若い""かわいい"武器は使えません。

氷河期という恵まれない時代でしたが、一人でなんとかやらなければいけない環境にいたからこそ、まわりの誰よりも経済力を身につけられたと思ってます。

 

ちなみに、パチンコ屋はさすがに怖かったのか、母はこの時だけ

給料を取りに来ませんでした(笑)

 

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