ある家族のノンフィクション手記

親兄弟は選べない。家族という病

楽園に行くか、滅びるか

ある日、学校から帰ると

またそのおばさんが来ていて、机の上になにかの本を開いていて

母と勉強の最中だった。

そのおばさんは佐津間(仮名)と言った。

佐津間姉妹と呼ぶのが正式の呼び方と言った。

姉妹というのは、バプテスマという洗礼を受けて正式に神に仕える儀式で

正式に信者となり、女性または姉妹、男性または男子は兄弟と呼び合う。

 

佐津間姉妹が「あら、よしこちゃん。おかえり。

今日からね、このお姉ちゃんがよしこちゃんに勉強教えるからね。

楽しいよ。私の娘でたけみというの。たけみ姉妹って呼んでね」

そういって、たけみちゃんという中学生のおねえさんを紹介された。

「姉妹?」

よくわからないまま、勉強ということは家庭教師かなと思い、

「はじめまして」と挨拶を交わした。

そして、部屋の片隅でたけみがかばんから取り出したのは

子ども向けのカラフルな絵がかかれた絵本のような冊子だった。

その絵のタッチが独特の世界観でこわかったのを覚えている。

「近い将来ハルマゲドンが来て世界は滅びるの。

この聖書の勉強してる人たちだけが生き残って、楽園に行くの」と言う。

なにかのメルヘンのお話を読み聞かせてくれてるんだぁと思った。

でも私はもう9歳だから、そんなのは信じないんだけどなぁ。

でもたけみちゃんは一生懸命私におとぎ話をしてくれてるしなぁ

「へぇ。すごいね」と返した。

 

また次の週も、その親子は家に来ていた。

母と佐津間姉妹は本を何冊か開け、勉強をしていた。

佐津間姉妹は「勉強してるから邪魔しないでね。

あっちに行ってよしこちゃんも勉強しておいで」と

たけみちゃんの方を指した。

 

「たけみちゃん、来てたの?」そういうと

「じゃあ、こないだの続きしようか」

と言って、そのつまらない冊子を広げた。

私は「この本はいいよ。他のことで遊ぼ」と言ったが

「これは大事なことだから、この勉強をしてから。そのあと遊ぼう」と

勉強を推し進めた。

「楽園に行ったら永遠の命と引き換えに好きなことできるのよ。

ねぇ。よしこちゃんは楽園に行ったら何をしたい?」

この質問に、正直9歳のわたしには永遠の命が魅力的に思えなかったし

別に永遠の命が欲しいわけでもなく、今の世の中も別に嫌いでなかったので

わざわざ楽園に行きたいとも思わなかったし、魅力的にも思えなかった。

「楽園に行かなくても、今したいことをしたらいいと思う」

と答えた。

私の答えの度に、たけみちゃんはいつも困った顔をした。

元々下がっている眉毛がさらに下がった。

たけみちゃんの眉毛を見て、

「あ。私、たけみちゃんが欲しい答えじゃなかったんだ」とわかった。

でも本当に楽園も永遠の命も胡散臭いし、そんなの来ないよと思っていた。

 

次の週も、同じでこの冊子の勉強だった。

9歳のわたしにはハルマゲドンが来て滅びるという話はピンと来なかったし

死への恐怖はまだ備わっておらず

そもそも楽園なんてお花畑のメルヘンのはなしで

これをまともに信じている人がいるのかと子どもながらに不思議に思っていた。

 

でも楽園に行ってしたいことをたけみちゃんの求める

欲しい答えを言わないと終わらない圧があった。

唯一、絞り出したやりたいことは

「日曜日のハウス食品世界名作劇場をゆっくりみたい」だった。

当時、我が家は男が優位で、女は口答えするな。

女は家のことをしろ。というのが母の考えで、

男子厨房に入らせず。

テレビのチャンネル権は男のもの。

 

女だから。

お姉ちゃんだから。

弟はまだ小さいから

我慢しなさい。

母の言葉はいつも説得力に欠けていた。

全然説明になってなかった。

私を説得できなかった。

母のその口癖が嫌いだった。

母が幸せそうに見えなかったから

母の言うことの「逆」が正しいと思っていた。

私には納得のいかない男女差という差別があり、男贔屓があり、

同じ兄弟なのに私だけ我慢することに納得できなかった。

母は弟たちには好きなことをさせたが

女は我慢するものだと、私にはいろいろ家のことを押し付けたり、我慢を強要した。

男を優先する風習があった。

私が見たい番組のひとつに、日曜日ハウス食品提供のアニメだったが

男性陣にテレビのチャンネル権利があり、

全く興味のない野球が常にかかっていたので

 

「日曜日のハウス食品世界名作劇場をゆっくりみたい」自然な答えがそれだった。

 

するとたけみちゃんがみるみるうちに顔が曇り

「それは世の物だから、ダメ。

ほら、もっとあるでしょ?ログハウスの家を建てたいとか」

といって、話をそらせた。

「あぁ。ベルサイユ宮殿のような宮殿に住みたい」

この答えも微妙だったようだ。

正直、この勉強は苦痛の時間だった。

 

つづく

 

#オカルトブーム #カルト宗教 #カルト #ノストラダムスの大予言 #終わりの日 #ハルマゲドン #人類滅亡 #宗教 #宗教2世 #宗教二世 宗教二世問題 #JW #エホバの証人 #毒親 #法律 #寄付 #献金 #元二世信者 #カルトの世界 #聖書 #協会 #異端 #危険 #キリスト教 #イエスキリスト #サイビ #宗教 #デマ #陰謀論 #宗教中毒 #JW #新興宗教 #マインドコントロール #洗脳 #カルト集団 #脱洗脳 #ブラック企業 #暴力 #暴言 #支配 #この世の人 #人権無視 #妄信 #アイデンティティ #マルチ #ねずみ講 #母親がしんどい #母がしんどい #母親が重い #母が重い #母という呪縛