ある家族のノンフィクション手記

親兄弟は選べない。家族という病

4人の例

私がこの組織から離れようと思ったのは中1。

お小遣いというものをもらったことがないから、家出の資金がない。

義務教育を卒業して経済力をつけるまで我慢。

脱退まで早くて2年。

2年というのは子どもにとってはとてつもなく長い。

大人になってからの2年なんて、ついこないだのように感じるのに。

 

その間、小学生、中学生の2世の子が次々に集会に出席しなくなったのを何回見送っただろうか。

父親が世の人(信者ではない)なら、父親を味方につけたらいい。

JWの親でも比較的理解のある人なら、親と子は別人格だからと信仰の自由を認めてくれる、JWにしては珍しく良識のある親御さんの場合も、小学校高学年、中学校になる頃には来なくなる子もいた。

 

そういう子を見ては、

あ~~いいな!!

羨ましいなぁ!

逃げれる環境なんだ。

理解ある親でいいなぁ〜!

 

とにかく羨ましくてしょうがなかった。

きっと私と同じように感じていた子はたくさんいたはず。

なにひとつJWの世界には楽しみがないのだから。

 

中学を卒業したら脱退すると決めたとしてもまだ2年ある。

信仰心なんてないのに、火曜、木曜の夜、日曜日の午前か午後の各2時間、週6時間

心に響かない話を聞かなければいけないのは苦痛だった。

でもその苦痛の中でも楽しみを見つけようとした。

 

神権家族と呼ばれる、家族全員がエホバの証人

お父様は長老、お母様も熱心で

子ども3人は美男美女の上、正規開拓者というJWの世界では輝かしい経歴の一家。

長男さんは正規開拓をしながら、集会の講演も頻繁にされ、

醸し出す人柄のよさ、物腰の柔らかい話し方でさわやかな青年で好評だった。

つまらない集会もこの人の話しならまだ聞ける。それを楽しみに行こう。

置かれた環境で楽しみをみつけるのはこの方法しかなかった。

我ながらいいアイデア!と思ったのも束の間…。

 

その日の講演もかなり感情を込めた講演で皆の心を鷲掴みにしていた。

つまらない聖書の世界もこの人が話すとなんだか聞ける気がしていた。

楽しみを見つけた矢先、その兄弟は次の週から急に集会に来なくなった。

あんなに熱心な講演をしたから、まさかイヤになって来なくなったとは考えにくい。

はじめは体調不良かと思っていた。

1ヶ月ほどすぎた頃、どうかされたのかな?と

気になってお母さん姉妹に「兄弟はどうされたんですか?」と尋ねたら

笑顔だった顔が急にこわばり、

「ちょっとね… 体調が悪くてね…」とだけ言って、さっと席を外した。

 

表情が一瞬真顔になったことを見逃さなかった。

隠されたら余計気になる。

 

別の日に、兄弟の妹さん姉妹にも

「〇〇兄弟、お元気にされてますか?お体大丈夫ですか?」と尋ねたら

笑顔だった顔が一瞬のうちに曇り、

「ちょっとね…体調がね…」とだけ言って

そそくさとその場を去った。

 

おや??なんだ?この違和感…。隠すということは…?そういうこと?

 

また別に日に、末っ子の姉妹にも同じこと聞いたら同じような反応だった。

はじめは本当に体調不良なのかと心配していたが、数か月後、

その兄弟の存在を忘れかけた頃に、久しぶりに集会に姿を現した。

兄弟は、以前のように精力的ではなかった。

以前なら熱心にメモを取って、集会中に何度も手を挙げ、

さわやかに神回答をしていた人が

別人のように目はうつろ、覇気がなく、嫌々ながら

無理矢理連れてこられた雰囲気だった。

 

集会が終わった後、兄弟のところに行き

「体調どうですか?」と尋ねたら

頭がものすごく痛くて、生活に支障が出てると言う。

当初は、病名がつかない難病かなと思っていたけど、

たまに無理やり連れて来られたであろう、兄弟は以前のように熱心ではなく

ただ時間が過ぎるのを待っているように感じられた。

たまに出席した日には必ず声をかけた。

そうしているうちに、何回目かの時に

「心と体のバランスがうまくとれなくて、頭が割れるように痛くて」と言ってくれた。

この人もきっと脱退したいんだけど、家族が許さないんだろうと思った。

 

この兄弟も外面こそ、熱心に見せているけど

きっとかなり前からJWに疑問を持ち始めているんだなと直感で思った。

それを許さない親。

神権家族ゆえのそのブランド力を保つために。

羨望の眼差しで見られていた神権家族。

若くして将来有望のサラブレッドと期待されていた息子が道から離れていくとなると神権家族の経歴に傷がつくからそれは躍起になって止めたに違いない。

3人の子どもが全員優秀で、大人からも信頼があり、子どもからも憧れの的だったけど、それはお母さん姉妹がそうでないと許さないだろう。

家族の中で一番力を持っているのはこのお母さん姉妹であることは間違いない。

違う道を歩みたくても神権家族ゆえの世間体(JWの)があるからこそ

抜け出したくても抜けれない。

目に覇気がないのは、2世あるある。

自分の人生ではなく、親の望む人生を歩むから心身が壊れる。

思ってること、言いたいことを感じていることを親や宗教の教えに反することだと

受入れられない、ムチをされるから

ごっくんごっくん飲み込み続けて

いい人、いい子を演じて、

作られた自分とのギャップが大きくて

自分でも説明できないくらい自分のことがわからなくなってるんだ。

飲み込み続けるうちに自分の言いたいことが押し込まれて

いざという時に言いたいことがすぐに出てこなくなったり

自分がどうしたいのかわからなくなるんだ。

それは小さい頃から本年を見せず、言えず飲み続けてきたから

無意識のうちに心にフタをしてきた証拠。

 

JWでは「柔和でいなさい」と教えられるから、みんな笑顔が素敵。

毒親の私の母親でさえも、傍から見ると、チャーミングな笑顔をするから

極悪な人には見えない。

でもこの柔和な顔こそが、人の心の闇に気づけないのだ。

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②さっちゃん家族のはなし

便宜上さっちゃん(仮名)とする。

さっちゃんという4,5歳くらい上のお姉さんがいた。

とても柔和で物腰も柔らかくて、二世あるあるの外面と特徴を持っていた。

私はこのさっちゃんが好きだった。

長年ずっと聖書を学んでいたのに、バプテスマは受けてなかったので

さっちゃんも私と同じにおいがするなぁと思っていた。

当時のJWの2世の進学は

①進学せずに、宣教活動とパートタイム

通信制の学校に行き、宣教活動に勤しむ

夜間学校に行き、昼は伝道活動し、夜学校に行く

このパターンが多かったと思う。

さっちゃんの家は母子家庭だったので経済的理由から

③のパターン+仕事だったと思う。

 

中学を卒業すると集会に来なくなった。

私はうれしかった。さっちゃんがようやく脱退できたんだと勝手に想像して安心していた。

それから数年経ち、さっちゃんの存在も忘れかけた頃。冬だったと思う。

伝道が終わりにさっちゃんのお母さん姉妹が

「寒かったからうちで温かいものでも飲んでいかれますか?」

と誘ってくれた。

伝道区域が姉妹の家の近くだった。

私と母はお言葉に甘え、姉妹の家にはじめて訪れた。

文化住宅1DKの部屋に布団をひきっぱなしだった。

正直よくこの状態で人を家に入れられたなぁとも思ったが

別の視点から見ると飾らないところがいいとも思った。

あまり整理整頓ができないのか、全部が大体が手に取れる範囲に物が置いてあり

年寄りにありがちな独り暮らしらしい家だった。

お茶をすすりながら、さっちゃんの近影の写真を見せてくれた。

それは昔のさっちゃんから想像できないくらい、色っぽくて美人に変身していて

どこかでばったり会ってもさっちゃんと気づかないほどだ。

「もうね、さっちゃんは結婚して子供もいるんよ」

え!!!

「中学の時は学校でいじめられて、居場所がなくてね。

夜間学校の先輩と出会ってすぐ子どもができて、結婚して…。学校も辞めて家庭に入ってね。私には隠してたけど、ずっと聖書の勉強をやめたかったらしいの」

さっちゃんはいつもとびきりの笑顔だったけど、その笑顔の裏ではいつも泣いていたのかなと思うと切なかった。

この文化住宅で母とふたり。

逃げ場所もない1K。

この柔和な姉妹もさっちゃんのことをムチで叩いたんだろうなぁ

でないと、16歳で結婚にはならないだろう。

柔和な顔は表向きの顔で、どの姉妹にも裏の顔があることを。

 

しばらくして、このさっちゃんお母さん姉妹が集会で無視のターゲットになった。

うちの母も例に漏れず

「お母さん姉妹と口聞いたらダメよ」と言ってきた。

「なんで?」

私の質問には答えなかった。

きっと母もその理由を知らなかったはずだ。

洗脳しきった人に、理由なんていらない。

周りが言うからそうしただけだろう。単純なこと。

自分の目で見て、考えて、答えを出す工程なんてない人たちなのだから。

母がこそこそと私に耳元でささやき、私がさっちゃんのお母さん姉妹を見たので

お母さん姉妹は自分のことを言われてることを察して

さみしそうな顔をしていた。

ついこないだお茶を交わした仲間なのに。。。

お母さん姉妹がポツンとひとり寂し気にしていたことだけが印象的だった。

それからそのお母さん姉妹は集会に来なくなった。

 

③別の神権家族のお母さん姉妹も無視の対象になった。

 

直接の原因はわからないが、私が想像する限りなのだが

さっちゃんお母さん姉妹も③のお母さん姉妹も

伝道活動が勢力的でなくなったからでは?と思っている。

 

天気のよくない日も伝道活動をする。

宣教活動で訪問された人ならわかると思うが

・忙しいのにイチイチ何しに来た?

・興味を持ってたらこっちから訪ねるし。興味ない人のとこまで来ないで

・また来たの?

 

そういう印象を受けると思うが、それがダイレクトに拒否される。

ほぼこの反応なのに、伝道活動を続けなければならない。

すると年を重ねてくると、体力的にしんどくなる。

伝道活動は楽しいと思ってやっている人はいないと思う。

課せられたノルマをこなすだけの人が多い。

 

真面目に伝道活動している人は、ラクしている人が許せない。

伝道活動に不真面目な人、伝道時間が少ない人に反感、嫉妬を持つ。

だって自分だって楽しくないのだから。

また身だしなみ、生活習慣が普通でない人、

模範的でない人も許せない人たちのように感じる。

 

以上、あくまで私個人が客観的に見て感じた感想です。

私個人の考えや感じ方にもバイアスがかかっていますが、あながち的を得てると思いますよ。

 

あとがき

今入信しようか迷っている人、

天候の悪い日が続いても、ノルマの伝道活動をこなすために

悪天候の中伝道活動に出向く元気があるか自問自答してください。

適当にやろうなんて他の信者が許してくれませんよ。きっと。

 

集会、伝道活動、往復の移動時間を加算すると週10時間、月にすると40時間

年間にすると480時間

人生で貴重な時間はどんなに悔やんでも戻ってきません。

 

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