・・・前回からのつづき
長老と司会者の姉妹との面談があるから
この日はあけておくようにと母親に言われた。
なんのことなのかわかない。
とはいえ、大体なんの件で呼び出されたのか薄々わかっていた。
奉仕報告書をオールゼロで提出したから、その件だなと。
私はバプテスマを受けていなかったので、少しずつ距離を置いて自然な形でフェイドアウトできると軽く思っていた。
まさか呼び出されるとは思いもしなかった。
この不活発な、迷える子羊を無理矢理、信仰の世界に引きずりこもうとしているのだろうか…。
改心するまで外に出られないのだろうか?
もうこの世界から逃げられないのだろうか?
相手がどう出るかわからない恐怖。
当時のことを覚えていない。
私の家だったのか、集会所に呼び出されたのか…。
司会者の家だったのか…。
まず長老ともう一人兄弟(宗教内で”兄弟”と呼ぶが、男性の信者のこと)
取調室で自供させられているかのような状況。
無機質な部屋で、長老と兄弟は手帳を取り出して、
私の答えを一語一句聞き逃さぬまいと、事細かにメモしていた。
部屋にはノートに書き込むペンの音が響く。
これがいわゆる、審理委員会というものなのだろうか?
この緊迫した状況で何を聞かれたのか全く覚えていない。
もう抜け出せないのではないかという恐怖心しか覚えていない。
なぜ不活発なのか…そういうことを聞かれたのだと思うが、悔い改めないのならば、悔い改めるまで牢獄に入れられるのではないかという妄想と恐怖心から、はっきりと思ってることを言えず、どっちつかずのいい子ちゃんの回答しかしていなかったと思う。
今は聖書の勉強より学業を優先したいというような趣旨のことを言ったと思う。
誰も傷つかない最善の理由で。
どこまで本音で話していいのかわからなかった。
そもそも家庭でも本音で話したことないから、
本音で話すことに慣れていないから、
できないし、本音で話すことが怖い。
相手の出方を探りながら、怒らせないように、恐る恐る当たり障りのない回答をしたのだと思う。
どのくらい時間がたったのか、覚えていない。
私には2時間にも3時間にも感じた。
そのあと、司会者の姉妹に交代して話し合いをした。
以前の記事にも書いたが、この姉妹は親兄弟姉妹、親戚一同がエホバの証人。
聖書の世界が全てで、そこを抜け出せない環境にいたからこそ、私が一旦エホバの世界から離れて、普通の学生生活を送りたいこと、
学業に専念したいこと(あくまで建前)
その気持ちを汲み取ってくれた。
もしやっぱり聖書の勉強をしたいと思った時、
その時は姉妹に司会者になってもらいたいこと
(これは本心)を伝えた。
特に反対もせず、私の気持ちを無理に変えようともせず、私の決断を尊重してくれた。
こんな司会者他にいないと思う。
本当にいい人で、なんでこんな形で出会ってしまったのかと悔やまれる。
姉妹は特別開拓者で家族から離れ、この地に来た。奉仕活動を優先するあまり、短時間のパートの仕事で、そのわずかな収入から家賃、光熱費を支出すれば、マイナスなのではないかと思える。
生活できていたのだろうか?
あれから30年以上の月日が経つが、今も信仰しているのだろうか…。
もしこの姉妹が私にSOSを出せばいつでも手を差し伸べるつもりでいたが、その機会はなかった。
この恐怖の拷問から状況が一変した。
火曜日の集会会場が私の家で行われていたが
不活発な人間がいるところでは集会は行えないという理由で、火曜日の集会所会場ではなくなった。
真っ白なシーツに一点のシミ、汚れ(それが私)があってはいけない。
サタンがいる家で集会なんてできないのだろう。
他の熱心な信者に悪影響を及ぼしてはならない…
その対応の早さたるはすごい…。
ただ心配なのは、二世の子どものことだった。
尋問を受けた際に、長老の横にいた兄弟、
その兄弟の子どももその1人だ。
一見、柔和な表情で物腰の柔らかい話し方こそする兄弟は外からはわかりにくいが
この兄弟も子どもへのムチは怠らなかった。
特に長男には厳しく教育していて、取るに足りないささいなことでも別室に連れていかれ、ムチをする。この少年はムチの恐怖からおもらしが治らなかった。小学校高学年になっても治らなかった。
とりわけお行儀もよく、真面目な子なのに、ちょっとのミスでもムチを受ける。
よく集会の座布団を濡らして「すみません」という状況が度々あったが、私にはわかる。
根底にはムチという恐怖心から来る精神的なものだということを。
信仰心で集会、伝道に行ってるのではない。
ムチの恐怖からだ。同じ2世だからこそわかる。
あの子は大丈夫だろうか。
ちゃんと抜け出せたのだろうか?
時々その少年のことがよぎる。
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不活発になったことにより、母からとんでもないことを突きつけられる。
その件は後日
・・・つづく
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